2016年2月3日水曜日

W.A.モーツァルト:ピアノソナタ8番



◎リパッティ(50年、EMI)

中学の時にピアノのコンクールで弾いた経験もある曲だけど、当時はシフのCDしか持ってなかった(たしかピアノの先生ご指定のCDだった気がする笑)。自分で色々な演奏を聴くようになって電撃的な衝撃を受けたのがこのリパッティの演奏。特に目立った特徴があるわけではない演奏だけど、この曲の悲劇性が本当にうまく表現されているなと感銘を受けた。それもいたずらに悲劇性を訴えた演奏なのではなく、涙ぐんでも微笑みを絶やさないような、澄んだ青空がどこまでも寂しく感じられるような、そんな演奏。この曲はもともと短調で書かれているけど、このリパッティの方向性というのは長調で書かれた協奏曲27番などにも通じるピンと張り詰めた虚しさを感じさせる。演奏はどこまでも淡々と、しかし丁寧に、一音一音をテヌート気味に弾いていく。弱音の神経質な響きはリパッティならではだなあと思う。リパッティ本人も白血病で亡くなる直前の録音ということもあり、そこいらの普通の精神状態での録音とは重みが全然違う非常に厳しい表情を持った演奏。いまだにこの演奏を超える8番の演奏ってないんじゃないかなあ。永遠に語り継がれるべき名盤。

◯ケンプ(62年、DG)

今度はケンプお爺ちゃんの演奏。リパッティのような崇高な精神性を持った演奏ではなく、明るい日差しが差し込むかような温かみのある詩的なモーツァルトで、懐の大きさを感じさせる演奏。微妙なアゴーギクを使っていろいろな表情を巧みに作り出していて感心する。少し技巧的に弱いところが散見されるけど、これはケンプお約束の「精神性」である笑。精神性って何なんだろうね、よく思うけど。あと「いぶし銀」ね。下手くそな演奏に使われる代名詞のような言葉だ笑。それはともかく、リパッティを聞くとケンプが聴きたくなり、ケンプを聞くとリパッティが懐かしくなる。甘いものと辛いものの組み合わせは聞き出したら止まらなくなる。うーん、個人的にはこの2つは双璧。

◯シフ(80年、Dec)

中学のとき聞いた原点の演奏。シフなんて大真面目な演奏が多いし、音大生がレッスンのために参考演奏として聞く演奏者と長年切り捨ててきたけど、今回8番の記事を書くために聞きなおしてみて意外にもイケてるなと思った。いや、上位2つはすぐに決まったんだけどあともう一点がなかなか決まらずにね。。グルダと悩んだんだけど、グルダは13番15番にとっておこうと思いシフにした次第。演奏は至って真面目で左手の処理も教科書的だが、決して無味乾燥な演奏ではない。抑制の効いた感情表現も見受けられ好印象。


CD NAME ZUMI

TEXTZUMI

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