2016年2月3日水曜日

J.ブラームス:交響曲第3番



◎クナッパーツブッシュ指揮ウィーンpo(58年、日本モニタードリームライフ)

クナのぶらさん。一部宇野こ◯ほ◯先生らが熱烈に支持している盤だが、たまたまこのドリームライフから出てる2枚組のCDが店頭で安売りしてたので買ってみたところ、これがとてつもなく良かった。まず3楽章を聴いてみると、冒頭から生々しい弦楽器の歌い回しにノックアウトされた。VPOだけに個々のビブラートがまざらないでそのまま聞こえ、ぞくぞくっとなる。ま、言ってしまえば官能的な演奏。そして、この指揮者のフレーズの取り方は大きいなあと痛感した。普通ならフレーズを収めて切る部分で、いやまだまだ終わってねえぞ!といった具合で、ぐいぐい続ける。むせび泣く弦楽器とでも一言でまとめておこう笑。3楽章でここまでこってり命かけてる演奏も珍しいと思う。1楽章などもppからffffくらいの猛烈なクレッシェンドをはじめクナの悪魔的表現がオンパレードで圧倒的。ちなみにくだんの大先生は50年のBPOライブを熱烈に推薦しておられて、クナのぶらさんの中で最上の出来と謳っているが、個人的にはこの58年VPO盤の方が上を行ってると思う。たしかに迫力という点では50年盤の方が上かもしれないが。そのほか44年BPO盤というものもあるが、こちらの出来はいまひとつパッとしない。

◯フルトヴェングラー指揮ベルリンpo(49年、EMI)

お次はフルベン。49年のBPOのライブ盤です。クナとフルベン、緩急自在のコテコテ派という点では共通しているが、両者は似て非なるものだと思う。クナは常に作品の外側から作品を見下ろし作品を手中に収めているのに対し、フルヴェンは内側から燃え上がり夢中になって振る。このぶらさんに関しても、まあ期待通りの熱演である。両端楽章は荒れ狂っており、BPOの重厚でドイツ的な荘厳な雰囲気が楽しめる。4楽章の盛り上がるところでは、楽譜にはないティンパニーが追加されていて効果絶大。3楽章はクナほど歌いまくってはいないが、濃厚なエスプレッシーボが炸裂している。

▲メンゲルベルク指揮アムステルダム・コンセルトヘボウo(32年、Ph)

大穴盤は大いに迷ったけど、大穴という点ではやはりメンゲルベルクかなと。とろけるVPOの弦が魅力のワルターのVPO盤(36年)、現代的な演奏ではあるが主観と客観のバランスが取れたジュリーニ盤(VPO、90-91年)、洗練される前のヤンカラ先生盤(63年BPO)など気に入っているけど、メンゲルベルクの面白さはハンパないのでチョイス。メンゲルベルクと言えば弦楽器が一斉にポルタメントをかけることで有名で、ぶらさんではその効果は大きい。特に3楽章は陶酔の域に入ってる。くらくら酔ってきますね。オケでポルタメントをかけると、バイオリンソロでのポルタメントとはまた一味違った味わいになるのが不思議。ソロとか室内楽でのポルタメントはお洒落、粋、ロマンチスト的な印象になるけど、オケでやると胸が締め付けられてキュンと痛むような虚しさを伴った雰囲気になる(もっともメンゲルベルクだからそう感じるのかもしれないけど)。これは病みつきになりますよ、ほんとに。1楽章とかもルバート多用でニヤニヤしちゃう演奏。

カラヤン BPO 88年(DG)

ブラームスという作曲家は本当に難しい。甘美さと、ある種の暴力性みたいなものを兼ね備えていないといかんのではないかと思う。いつも聴く指揮者がほぼ全滅である。そんな中、珍しくカラヤンが選ばれたというのに、てもさんとは一致しないという、これはなんか一種の不条理である。僕がカラヤンを選ぶことは殆ど無いと思う。とくに古典派ではありえないだろう(あったとしたらてもさんにきっと洗脳されたのだ(笑))。しかし、この曲のこの盤に限って言うと、心地よさが半端ではない。とにかく重厚だが、それに負けない高音の鋭さ、低音の広さ、そして完全にコントロールされたデュナーミクが魅力。すべてがよく絡みあって、造形していく。カラヤンにしてはガシガシとマッチョな演奏をしていると思うが、どうだろうか。そんなにカラヤンを聴いたことはないので、そこらへんはてもさんの意見をききたい。特に3楽章から4楽章の流れは他を寄せ付けない。唯一泣いた録音。3楽章のバスのピッチカートに支えられて木管と弦が奏でゆく音楽は、浜辺で夕日の中、寄せては返す波を見ているようで、いつまで見ていても飽きない、というような美しさがある。4楽章、Un poco sostenutoからの赦しの音楽、ともいうべきパッセージに、最後に現れる愛おしいばかりの主題に、そうだよねぇ、と頷くばかりである。高校の同級生のオススメで聴いた。

ガーディナー ORR 08年(Soli Deo gloria)

しょっぱなからクリアな音が聞こえる。エキサイティングだ。ティンパニが楽しい。当然だけれど、カラヤンとは全然聴くところがちがう。どこまでも解像感ゆたかな音のならびである。ピリオドピリオドっていうが、何が一番いいかといえば、転調した時の劇的さ、だと僕は思う。平均律ではないからこその劇的さがあるのだ。まぁ、僕の知っている中でピリオドでブラ3やってよかったね、っていうのは今のところこれだけであるな。透き通る音色はORR独特のもの。4楽章に劇的さを求めるならば、この一枚もオススメ。この盤には、モンテヴェルディ合唱団の歌うブラームスがカップリングされているが、モンテヴェルディ合唱団の素晴らしさがよくわかる録音で、盤全体としてもオススメ。たぶんいちばん長い間聴いていた録音。発売直後に手に入れた、ハズ。

ヴァント ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団 55年?(BnF)

モノラル録音で、そんなに音質も良くないのだけれど、キラリと光るものがあるので。なんかことブラームスに関しては、価値判断基準がすごくズレる気がする。 木管、とくに抑制的なファゴット、ホルンがいい味を出している。前に紹介した2つを聴いてから聴くべきでは、ない。緩徐部分での蠢動する感じとか、淡々と刻んでいく様子などは逆に清々しい。4楽章の3連符の領域はヴァントの真骨頂だと思う。あと252小節のチェロがよい。やはり3番はメリハリのある演奏が好きなのだな、という再発見のためにあるような一枚。

でもまぁ、左の人とはちがって、総じてしゃっきりとした演奏が好きですね。

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