2016年5月6日金曜日

ドヴォルザーク:ピアノ五重奏曲


てもさん:

▲ルービンシュタイン(Pf)、ガルネリSQ(71年、RCA)

いきなりの大穴盤に登場していただく。ルービンシュタインのドヴォルザークである。ルービンシュタインと言えばショパンをはじめとしたオーソドックスな解釈のソロ作品が有名で、一方ドヴォルザークのこの曲と言えば大概がリヒテル盤あたりを挙げるのが見識というところだろう。ところが意外にもこの曲にルービンシュタインが合うのである。それもショパンのようなピアノ教室のお手本のような演奏ではなく、強烈な表現意欲を持ってこの名曲に挑んでいるところが凄い。こんなドヴォルザークはなかなかない!!とにかくとの瞬間もルービンシュタイン独裁のような状態で、彼のピアノの入り方如何でガルネリSQの表現がガラリと変わるのである。しかも、独裁によって室内楽における自発的なアンサンブルの流れが失われているかというとそんなことはなく、ガルネリSQのなんとも香り高いむせ返るようなロマン的な表現は圧倒的で、明るく美しい旋律を持つ、悪く言えばさらりと流れやすいこの曲が、異様なまでのロマンの香りがするただならぬ音楽に変貌している。ピアノパートの旋律になると、途端にピアノの音色が輝きを増し圧倒的な存在感でもって弦楽四重奏の上に浮き上がってくるし、1楽章の2度あるクライマックスでは普通の奏者なら決してかけないようなルバート(テヌートというべきか)を用いてドヴォルザークのメロディーメーカーの側面を最大限に強調している。ルービンシュタインってこんなに主張が強い演奏をするのかと恐れ入ってしまった。しかしそうするとあのよく知られたショパンの演奏は何なのだろうか笑。そんなところだから当盤は現在ほとんど市場に出回っておらずずっと廃盤のままと思われる。ルービンシュタインって実はソロより室内楽のほうがうまいのではと個人的には思ってる。ブラームスのトリオは大変な名演だし。

◯スメタナSQ、シュテパン(Pf)、(66年、EMI)

次。スメタナSQの旧盤。パネンカのピアノによる新盤ではないので、ご注意を。こちらもほとんど市場に出回ってないと思われるもので92年あたりに一度EMIから国内盤が出たようであるがそれっきりで、筆者も駅売海賊盤(エールディスク製)でCDを入手した(画像もネットでEMIのものを探したがヒットせず。仕方ないので手許にある件のエールディスクのものを使用した)。しかし新盤では聞かれない自然な音楽の流れや、ボヘミアのローカル色と純音楽としての普遍性の絶妙なバランスなど、なぜに廃盤なの?と言いたくなるような演奏で、末永く聞く向きにはこれが一番なのかもしれない。演奏は特段目立った特徴があるわけではないが、どの表現も角が立っておらず常にまろやかな表現なのが特徴と言えば特徴で、この控えめなロマン性の表出こそがこの盤が私を惹きつけて離さない所以である。ヤフオクにも時々出品されているので皆さん買いましょう笑  FICというところから出ているのも同一盤なのでOKです。

◯リヒテル(Pf)、ボロディンSQ(83年、ビクター[VICC-60007])

有名なリヒテル盤。と言ってもフィリップスから出ている1982年のものではなくこちらは1983年のライヴ盤。フィップスのものもこちらも1年違いのライヴ録音だが、82年のほうはなんだかとってもテンポが早くて、どうもせかせかして好きになれないし、なんだかとても雑であまり好んで聞かない(リヒテルもミスタッチがとてつもなく多く、弦の奏者も音程をやたら外している)。それに比べ、83年の当盤は幾分落ち着いたテンポで堂々とした演奏で好感が持て、82年で聞かれた雑な感じもなくなっていて完成度が高い。それに、ライヴだけあって非常に情熱がほとばしる熱い演奏になっていて凄みもある。リヒテルの力強いピアノはやはり少しデリカシーがないように感じるが、まあこれはリヒテルだから仕方ない。しかし凄いのがボロディンSQ。どの弦楽器の音色も鮮やかで、完全に鳴りきっており聞いていて心地よい。それに加え時折入るポルタメントやロマンチックな表現など決して無味乾燥にはならない。どの楽章も聞いた後胸のすくような快感を残す。オススメ。

◯ウィーンフィルハーモニーSQ、カーゾン(Pf)(62年、デッカ)

最後。こちらも忘れてはならない名盤。ボスコフスキー率いるウィーンフィルSQによるひときわ美しい一枚。ウィーンフィルの奏者だけあって弦楽器は艶やかな音色でもともとロマンチックな旋律を持つこの曲だが、なんだか違う方向にロマンチックになっているような気はするが笑、ヴァイオリンの極細の煌びやかな線が合わさり絹のような肌触りをも感じさせる上品な表現は私は好き。上のリヒテル盤のような盛り上がりも推進力もないし、終始おとなしい演奏なのが逆に好印象。"土着の"という言葉がもっとも似合わない名盤。
ずみさん:


CD NAME ZUMI

TEXTZUMI

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